【12星座の物語】ギリシャ神話から知る牡羊座

占星術でおなじみの12星座。それぞれの星座は、ギリシャ神話と深い関連があります。古代バビロニアで生まれた占星術は、その後ギリシャに伝わった後に神話の物語や登場人物が結び付けられました。

占星術でなじみのある12星座は、ギリシャ神話のなかに、時代や地域を越えて伝わる元型的な意味を見いだすことができ、ギリシャ神話を知ることで、星座のもつ性質をより多面的かつ本質的に理解できます。

この記事では、12星座の中から牡羊座にまつわる神話についてお伝えします。

目次

牡羊座の基本情報

一般的に星占いで「牡羊座」という時は、生まれた瞬間に太陽が牡羊座に位置していたことを意味しています。

星占いで牡羊座の人:3月21日~4月19日生まれ

学名は「アリエス(Aries)」。約2,000年前には、天文学で重要な春分点が牡羊座にありました。そのため、太陽の通り道上にある黄道12星座の起点とされています。西洋占星術でも、ホロスコープは牡羊座からスタートしています。

なお、現在は地球の歳差運動により春分点は「魚座」に移動しています。

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牡羊座はいつ見られる?

天文的には、牡羊座はあまり目立たない星座です。西洋占星術では、春生まれの星座ですが、実際に夜空で見られるのは秋から冬にかけた時期。日本では「秋の星座」として知られています。

牡羊座のギリシャ神話

牡羊座と関連があると考えられているのは、「金の羊毛」の神話です。この神話は主に、古代ギリシャの都市イオルコスの王の息子、イアソンの冒険について描かれています。

イアソンの父アイソンは、イオルコスの正当な王でした。しかし、アイソンの異母兄弟であるペリアスは、自分が王になるために、弟アイソンを退位させる計画を立て、アイソンとその息子のイアソンを追放します。

ペリアスは、イアソンが成長した時に王位を取り戻しに来ることを恐れ、彼を殺そうとしましたが、イアソンは助かりました。

その後、成人したイアソンは、正当な王位を取り戻すためにイオルコスに帰還します。しかしペリアスはイアソンをすぐに排除できず、彼に困難な試練を課すことにしました。そして、「金の羊毛」を持ち帰るようイアソンに命じます。

そこから、イアソンの長く険しい冒険の旅が始まります。

イアソンはアルゴ船を建造し、多くの英雄たち(アルゴナウタイ)と共に冒険に出発します。彼はアルゴナウタイのリーダーとして多くの困難を乗り越え、仲間とともに金の羊毛を手に入れました。この冒険の過程で、イアソンは自分の力と知恵を証明します。

この冒険のエピソードから、イアソンはギリシャ神話の英雄として知られています。

ギリシャ神話から読み解く牡羊座の意味

西洋占星術における牡羊座は、黄道12星座の始まりの星座であり、火のエレメントをもつことから、次のような意味を持ちます。

・存在の発祥
・自分の内側から駆り立てられたような行動力
・自我の形成、アイデンティティの確立
・女性性に対する葛藤 など

「イアソンの冒険」の神話の中で、以下の点が牡羊座の特徴と関連があると考えられています。

イアソンのリーダーシップ

 ・否定的な二つの父親像との対立

イアソンの危険な魔女との結婚

それぞれ、牡羊座とどのように関連しているかを解説します。

イアソンのリーダーシップに見る牡羊座の性質

イアソンはギリシャ神話において、類い稀なリーダーシップと冒険心を持った英雄として描かれています。このリーダーシップが、牡羊座の先駆者、探検家、冒険者としての性質を象徴しています。

イアソンはアルゴ船を建造し、ギリシャ神話で最も有名な英雄の一人であるヘラクレスや賢明なオルフェウスなど、多彩で優れた英雄たちを乗組員として集め、アルゴナウタイを結成します。イアソンはこの一人一人が才能にあふれる多様なチームを巧みに統率し、未知の領域へと彼らを導きました。

イアソンのリーダーシップのもと、アルゴナウタイは数々の自然災害や神々の試練を乗り越え、金の羊毛が保管されている未踏の地コルキスに到達しました。

イアソンのリーダーシップは、単に目的地に到達させることに留まらず、困難な状況下でも仲間を鼓舞し、希望を持ち続けさせました。

彼の旅は、単なる探検以上の意味を持っています。新たな可能性への挑戦としてギリシャ人に大きなインスピレーションを与えました。

否定的な二つの父親像との対立で描かれる牡羊座の性質

イアソンの物語は二つの否定的な父親像を通して、権力の濫用と裏切りのテーマを掘り下げます。この物語は、牡羊座の「過去を否定して、自分の存在を力強く主張すること」を象徴しています。

父親像の一人は、イアソンの叔父であるペリアス、もう一人は、金の羊毛を所持するコルキスのアイエテス王です。

ペリアスは、冷酷にもイアソンから正統な王位を奪い、試練を与える存在です。

アイエテス王もまた、金の羊毛を求めて訪れたイアソンに非常に困難な試練を課します。アイエテス王の真の意図は、イアソンに羊毛を渡すことなく、試練を通じて彼を排除することでした。​

牡羊座は、自我を確立する過程で、挑戦し、立ちはだかるものと戦うことを示唆しています。

これらの否定的なふたつの父親像は、「父の束縛をかなぐり捨てるための冒険」を始める原動力となります。つまり、父親=絶対的な権威に文句を言ったり背を向けるだけでは、自我を勝ち取ることができないことを象徴していると言えるでしょう。

また牡羊座は、集団的な大海から現れてくる「個」の力を象徴します。牡羊座はその個別性を主張するために、集合的な過去の引力に抗って戦わなければならない運命です。

否定的な父親像やあらゆる過去が、牡羊座を引き留めようとします。その時に前進し、「個」を主張するために、自分自身の身体を精力的に使い、頭脳を最大限に駆使して進んでいくことになるのです。

実際は、牡羊座の星を持つ人でも、身体を使うほうが得意な人と、頭脳と知性を使うのが得意な人とに分かれる傾向があります。

イアソンの危険な魔女との結婚に象徴される牡羊座の教訓

イアソンの物語のクライマックスは、彼が選んだ花嫁、メディアとの複雑な関係にあります。メディアはアイエテス王の娘で、強力な魔術を使う魔女。彼女は自らの国を裏切り、恋に落ちたイアソンを助けるために家族を離れます。

メディアの力のおかげで、イアソンは金の羊毛を手に入れられましたが、彼女の存在は同時にイアソンの人生における大きな脅威となります。

この物語は、牡羊座の女性性を認めるのが難しい傾向を示唆しています。

牡羊座は、集合的な過去の引力に抗って「個」を主張する性質をもつため、受容的で前進しない女性性は受け入れがたいものなのです。

献身的なメディアの愛の裏には破壊的な力が潜んでいて、後に二人の関係は悲劇へと向かいます。

魔女メディアが象徴しているのは、男性の魂のなかの女性性の要素です。イアソンは英雄的な男性像ですがそのために、自分自身の女性的な面を無視し、隠してしまっていたと考えられます。

自分の中の女性性を認めることを拒絶したために、それが危険な形で噴出し、魔女メディアと惹き合いました。

このエピソードには、牡羊座の教訓が象徴的に描かれています。過去を振り返らないために悪役としての父親像を必要としました、。

苛烈に前だけを向いて前進したことで自我を獲得していくことが牡羊座の性質です。それは同時に、後ろを振り返る勇気がないこと、女性性を認めることへの恐怖と繋がります。しかし、そうして無視され続けたものは、後に破壊的なエネルギーを持って噴出します。

イアソンの物語では、それが魔女メディアとして描かれています。魔女メディアとの悲劇は自分の歩みや過去を振り返り、すでに獲得したものにも目を向けることも必要であったという牡羊座の教訓を示していると言えるでしょう。

こうした牡羊座の教訓は、西洋占星術で表現される牡羊座の姿が、後ろを振り返った姿で描かれていることにも示されています。

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