占星術でおなじみの12星座。それぞれの星座は、ギリシャ神話と深い関連があります。古代バビロニアで生まれた占星術はその後ギリシャに伝わり、後に神話の物語や登場人物が結び付けられました。
占星術でなじみのある12星座は、ギリシャ神話のなかに、時代や地域を越えて伝わる元型的な意味を見いだすことができ、ギリシャ神話を知ることで、星座のもつ性質をより多面的かつ本質的に理解できます。
この記事では、12星座の中から双子座にまつわる神話についてわかりやすくお伝えします。
双子座の基本情報
星占いで双子座の人:5月21日~6月21日生まれ
一般的に星占いで「双子座」という時は、生まれた瞬間に太陽が双子座に位置していたことを意味しています。
学名は「ジェミニ(Gemini)」。太陽の通り道上にある黄道12星座のひとつです。
双子座は、夜空に見える星の中で最も明るい星である一等星と次に明るい星二等星が並んでいます。そのため、比較的見つけやすい星座です。
双子座の明るく光る星が一等星の「ポルックス」。隣にある二等星が
「カストル」です。ポルックスが金色に、カストルが銀色に見えることから、金星銀星と呼ばれることもあります。この二つの星が、まるで双子のように寄り添い輝いています。
ギリシャ神話では、カストルが兄でポルックスが弟とされています。
双子座はいつ見られる?
冬の星座の双子座。冬の夜空を代表する冬の大三角を目印にすると、見つけやすいです。
冬の大三角は、オリオン座の「ベテルギウス」、おおいぬ座の「シリウス」、こいぬ座の「プロキオン」の3つの星を結んでできる大きな三角形。
冬の大三角形の上の方に視線をずらすと、明るく輝く二つの星「ポルックス」と「カストル」を見つけられるでしょう。
双子座のギリシャ神話あらすじ
双子座と関連があるギリシャ神話は「カストルとポルックス」の物語で、互いに愛し合う双子の兄弟の絆が物語の中心として描かれています。
スパルタ国の王妃レダに魅了されたギリシャ神話の主神ゼウスは、白鳥に姿を変えて彼女のもとに通い、誘惑します。そうして愛し合った二人のもとに、二組の双子が誕生しました。男の双子カストルとポルックス、女の双子ヘレネとクリュタイムネストラです。
二組の双子には、大きく違う点がありました。それは、ポルックスとヘレネは半神半人の子で不死の体を持って生まれたのに対して、カストルとクリュタイムネストラは人間の子だったことです
カストルとポルックスの二人はとても仲が良く、共に多くの冒険に挑みました。また、「ゼウスの息子たち」を意味する「ディオスクロイ」として知られ、船乗りたちの守護者として崇拝されていました。
彼らは、牡羊座のギリシャ神話として知られる、英雄イアソンのアルゴ船の冒険に参加します。冒険で二人は多くの戦いに挑みましたが、人間の子であるカストルは戦いで命を落とします。しかし、不死の存在であるポルックスは、兄カストルとともに死ぬことはできませんでした。
嘆いたポルックスは、父ゼウスに自分だけ不死であることはできないと懇願します。しかしゼウスは、兄カストルを生き返らせることはできないため、代わりに、彼らが神々の世界(オリンポス山)と冥界で交互に時間を過ごすよう定めました。
ギリシャ神話から読み解く双子座の意味
西洋占星術における双子座は、次のような意味を持ちます。
- 多様な性質を持ち共存している中性性
- 内なる二面性
- 知性
- 成長
双子座の神話の中で、以下の点が双子座的な特徴を備えていると考えることができます。
- 二組の双子が「四位一体」の存在であること
- ヘレネとクリュタイムネストラの対極の性質
- カストルとポルックスの兄弟関係
それぞれ、双子座とどのように関連しているかを解説します。
二組の双子が四位一体の存在と中性性
占星術では、双子座は3番目のサインで男性宮・女性宮の2区分では、男性宮に分類されます。そのため、男性性的要素が強調されるカストルとポルックスの兄弟が注目されがちです。しかし、双子座は、ヘレネとクリュタイムネストラという双子の姉妹を合わせて4人で一体となる存在です。
この2組の双子は、「人間と神」「男性と女性」という多様な要素が交差する「四位一体」で、全体性を象徴します。このことから、双子座の人々は、対極にある2組の要素を統合して使う、そんなイメージがあります。
たとえば、男性性と女性性の統合による中性、人間(あるいは冥界)と神の世界を行き来できる中立的な存在といったイメージです。
このように、双子座の人々には中性的な特徴が見られます。
双子座の中性的、中立的な特徴は、支配星にも現れています。双子座の支配星である水星は、神ヘルメスに相当し、知性やコミュニケーション、移動を司ります。ヘルメスは、冥界と神々の世界を行き来できるとても珍しい存在でした。
また、サインと同じように天体も、男性性、女性性に区分されますが、そのなかで水星は男性性でも女性性でもなく、中性的な天体とされています
ヘレネとクリュタイムネストラの対極の性質と二面性
占星術において双子座は、二面性を示しています。ギリシャ神話では、ヘレネとクリュタイムネストラが「二面性」を象徴しています。
ヘレネは神話の中で、しばしば運命に翻弄される存在として描かれていて、自分の意志よりも周りの決定に従う受動的な人柄です。たとえば、トロイア戦争の引き金となる、ヘレネの誘拐事件のエピソードもその一つ。
トロイアの王子パリスがスパルタ国を訪れた際、美しいヘレネに一目惚れし、彼女をトロイに連れ去ります。しかしヘレネは、この状況に対してほとんど抵抗を示しませんでした。
一方、姉クリュタイムネストラは、より暗い暴力的なエネルギーがあり、強い意志を持っていました。彼女の最も有名なエピソードは、夫アガメムノンに対する復讐の物語です。
夫アガメムノンが、彼女の最愛の娘を女神への生贄として捧げたことに対して強い恨みを抱きます。そして彼女は、自らの意志で愛人と共謀し夫を殺害。復讐を果たします。
ヘレネは敬虔で受け身であるのに対し、クリュタイムネストラは、強く欲望に動かされる、強い意志を持った女性として描かれています。
双子座の二面性
双子座の人は、二面性を持っていることで知られています。たとえば、社交的である一方で、自分と向き合う一人の時間を大切にするなど。
こうした双子座の二面性は、単なる表面的なものではなく、心理的な自我(エゴ)と影(シャドウ)の葛藤に由来しています。
また、双子座の人は、「おしゃべり」な性質を持っていますが、これは内なる二面性が統合されないと、無意味なおしゃべりを続けることがあるためです。
柔軟な双子座
双子座の人が柔軟であると見られるのも、自我と影との葛藤と関連しています。
自我と影の二面を行き来するため、常にとどまらない、固定化しない性質が、柔軟性という性格的な傾向に繋がります。
双子座の知性
支配星に水星を持つ双子座は、知性を象徴します。双子座の人は、知的好奇心が落ち着くことなく未知を追い求め続けるため、未知の探求を止めることは耐え難いことかもしれません。
双子座の「知性」は、内なる二面性が統合されないと、知性の分離を経験することがあります。光と影、物質と精神、右手と左手が別々に動くような対極の分離により、知性をうまく発揮できません。
なお、知性は目的と倫理観と結びつくと、よりよく発揮されると考えられています。なぜなら、知性の惑星である水星は、太陽(目的)や木星(倫理や社会的善)との関わりが必要であると考えられるからです。
ギリシャ神話においてヘルメス(水星)は、アポロン(太陽)やゼウス(木星)と積極的に関わります。
太陽や木星的な要素と関わりながら、水星は、二極や二面性を統合していくことが、課題でもあります。なお、ヘルメスが持つ杖はカドゥケウスの杖といって、杖の周りを二匹の蛇が螺旋状にのぼっています。これは二極の統合、葛藤の解消を示しています。
成長した双子座は、内なる二面性を統合することで、新たな知性の領域を探求する課題を持つようになります。
カストルとポルックスの兄弟関係と成長
双子座の人は、しばしば兄弟や同僚など親しい関係の人と知的な競争や挑戦を通じて成長します。牡羊座のような肉体的挑戦ではなく、精神的・知的な挑戦が求められます。
この双子座的な成長は、まさにカストルとポルックス兄弟の物語に描かれています。カストルとポルトックスは、兄弟であると同時に互いの成長を支え合う存在でした。
カストルは馬術の名手であり、ポルックスは戦闘技術(ボクシング)を磨いていました。お互いに良いライバルとして、それぞれの専門性や技術を追求し、お互いの能力を補い合うことで成長していきました。